日本で「英語の資格」といえば、真っ先に思い浮かぶのが「英検(実用英語技能検定)」です。
中学や高校、大学の入試で加点や免除につながることも多く、就活や履歴書に書ける資格としても広く知られています。
しかし、一方で気になる声もあります。

「本当に英語力を正しく測れているのか?」
「受験料ばかり高くなっていないか?」
「採点や面接は公平なの?」
英検は日本国内で圧倒的な存在感を持っていますが、その仕組みをよく見てみると、受験生や保護者が知らない“見えない側面”があるのです。
本記事では、英検のメリットと影響力を確認しつつ、その裏に潜む「闇」の部分ーー受験料・面接官の質・評価基準の不透明さについて掘り下げていきます。
英検の影響力とメリット
英検の一番の強みは、日本国内での圧倒的な影響力です。
入試での優遇
中学・高校・大学の受験では、英検の級によって「加点」や「英語試験免除」が認められるケースが増えています。
- 例:高校入試で「英検準2級を持っていれば英語試験に加点」
- 例:大学入試で「英検準一級=英語100点満点換算」
つまり、他の受験生よりもスタート地点で有利に立てることになります。
学校の“実績作り”
多くの学校は「英検〇級合格者◯人!」とパンフレットや公式サイトでアピールします。
それだけ学校側にとってもブランド価値がある資格なので、子どもが英検を取ると「学校に喜ばれる」という構造もあります。
就職活動や資格としての知名度
英検は履歴書にも書ける資格です。
特に準1級以上は「高い英語力の証明」として評価されやすく、就職活動でもプラスに働くことがあります。
ただしこれは国内中心の話で、海外ではあまり知られていません。
受験機会が多く取りやすい
TOEFLやIELTSと比べると、英検は全国各地の会場で年に複数回実施されているため、地方の子どもでも挑戦しやすいという利点があります。
最近はCBT(コンピュータ受験)も導入され、日程を選んで受験できるようになり、以前より受験機会はぐんと増えました。
英検は
- 国内進学に直結する強み
- 学校や親にとって“成果が見えやすい”資格
- アクセスしやすい試験環境
この3つで、日本では“事実上の標準”として定着しているんです。
見えない闇①:面接官の質
英検の大きな特徴のひとつが、面接によるスピーキング試験です。
一見すると「実際に話す力を試せるからいいじゃないか」と思えますが、ここに大きな課題があります。
面接官の多くは日本人
英検の面接官は、英語ネイティブだけでなく日本人の英語教師や、海外の日本人学校の先生が担当するケースもあります。
つまり、受験生の「ネイティブ的な自然な表現」が、面接官によっては正しく理解されないリスクがあるんです。
- 例:ネイティブなら自然に聞こえるフレーズ → 面接官が「聞き慣れない言い回し」と判断して減点する可能性。
これって本当に、英語でのスピーキング力を測ることができると言えるのでしょうか。
だから海外育ちの日本人が流暢な英語で話すと落ちるなんていうことが起こるのではないでしょうか。
面接官の質にばらつきがある
面接官になるためには一定の研修を受けるものの、
- 実際の英語力
- 評価経験
- バイアスのかかり方
には大きな差があります。
特に海外の日本人学校での実施では、日本から派遣された先生(必ずしも高い英語力があるとは限らない)が面接官を務めることもあり、「この人に判定されるの?」と感じる声もあります。
自分の教え子の英検の審査員をするって、判定がどうしても甘くなってしまわないのでしょうか。
公平性の問題
英検は全国規模で実施されますが、面接官によって基準が微妙に異なる可能性があります。
- 寛容な面接官にあたる → 点が伸びる
- 厳しい面接官にあたる → 同じ実力でも点が伸びない
もちろん、採点基準は明確に詳細に設けられていて、十分な研修を受けた方が面接をしています。
ただ、ずっと海外で娘たちを育ててきて思うのですが、英語ってそんなにシンプルな言語ではないと思います。
それは英語に関わらずだと思いますが、「この言い方も正しいし、こっちの言い方も正しい。」というのを、きちんと理解できる面接官ばかりではないのでは?というところです。
そうすると、受験のためになったとしても、本当に英語力を知ることができる試験としては機能していない現実があるかもしれません。
英検のスピーキングは、「面接官の質」と「評価の一貫性」に疑問が残る試験。
子どもがどんなに実力をつけても、評価者の力量次第で結果が左右される可能性があるのは、大きなリスクだと言えます。
見えない闇②:受験料とビジネスモデル
英検のもう一つの大きな問題は、受験料の高さとビジネスモデルの仕組みです。
年々値上がりする受験料
英検の受験料はここ数年でどんどん値上がりしています。
- 5級:4,100円
- 2級:9,100円
- 準1級:10,500円
もし5級から順番に準1級まで全部受けると、合計で5万円以上。
さらにテキストや問題集を買えば、6万円以上の投資になります。
しかもストレート一発合格した場合でもです!
親としては「子どものため」と思って出す額ですが、冷静に考えると決して安くはありません。
CBT方式で「回数勝負」できる
最近は「英検CBT」という、月に複数回受験できる方式も普及しています。
その結果、
- 1回落ちてもまたすぐ受ける
- 何回も受ければどこかで合格できる
という戦略が取れるようになりました。
受験生にとってはチャンスが増える反面、英検協会の収益拡大につながっているのも事実です。
実際、私の周りでは、駐在からの本帰国を中学受験や高校受験のタイミングでする家庭が多くいます。
驚いたのは、一時帰国でCBTを複数回申し込み、何度も受験する人も珍しくないそうです。
しかも帰国子女枠の受験であれば価値があるのは準1級以上の場合が多いです。
3回受けたら3万超えですよ!
さらには在住国で、英検対策セミナー等を塾やオンラインで受けて何万円も課金する家庭も珍しくありません。
学校との“持ちつ持たれつ”
学校側も「英検〇級取得◯割!」という実績を掲げたいので、
- 学校で団体受験を推奨
- 英検対策授業を組み込む
といった動きがあります。
つまり、学校と英検が“WIN-WIN”の関係になっているんです。
結果的に、保護者はその流れに巻き込まれ、「とりあえず受けないと…」という空気に支配されてしまいます。
英検は「国内での英語力を測る試験」であると同時に、巨大な教育ビジネスでもあります。
受験料と回数受験の仕組み、学校とのつながりを考えると、「子どものため」というより「仕組みに巻き込まれている」側面も無視できません。
見えない闇③:評価基準の不透明さ
英検のもう一つの課題は、採点基準の詳細がはっきり公開されていないことです。
スピーキングの“聞き返しOK”問題
英検の面接では、質問を聞き逃したら「Pardon?」などと聞き返しても減点されません。
これは一見、実際のコミュニケーションに近くて良さそうです。
でも逆に考えると――
- 聞き返しはOK
- でも、ネイティブが自然に使う表現が減点対象になるリスクがある
という矛盾があります。
例えば、受験者がネイティブっぽい言い回しをしても、面接官の英語力が足りずに「不自然」とジャッジされる可能性もあるわけです。
採点者のレベルが不明
TOEFLやIELTSのスピーキングは、複数の採点者が録音データを聞いて評価するシステム。
一方で英検は、面接官=採点者。
つまり、その場の一人の判断が合否を大きく左右します。
面接官がどれだけ英語を理解できるのか?
そのトレーニングやバックグラウンドは?
公にはほとんど情報が出ていません。
フィードバックが少なすぎる
英検を受けたあとに返ってくるのは「点数」だけ。
TOEFLやIELTSのように「発音・文法・流暢さ・内容」といった細かい評価基準は示されません。
そのため、何が良くて何が悪かったのかが受験者にはわからないんです。
結局、「受かった/落ちた」という結果だけで、学習改善につなげにくい仕組みになっています。
英検のスピーキングは「実用的なやり取り」を目指しているように見えて、実際には 面接官の力量や主観に左右されやすい。
さらに、フィードバックがほとんどないため、子どもの英語力を伸ばす材料にはなりにくいという限界があります。
他の試験との比較:TOEFL・IELTSとの違い
英検は日本国内での影響力が圧倒的に大きいですが、国際的に見ると評価基準や仕組みには違いがあります。
ここではTOEFLやIELTSと比べてみましょう。
採点体制
- 英検
- 面接(スピーキング)は人間の面接官1人または2人が評価。
- ライティングも人間が採点するが、採点者の力量や基準のばらつきが気になる。
- フィードバックは点数とA~C評価のみで具体性が乏しい。
- TOEFL / IELTS
- 複数人の採点者+標準化された基準で評価。
- TOEFLのスピーキングは受験者の回答を録音し、複数の評価者が別々に採点。
- IELTSは人間1人が面接するが、国際的にトレーニングされた試験官が担当。
- フィードバックは「発音・流暢さ・文法・語彙」など細かく基準化されており、学習改善の目安にしやすい。
国際的な通用度
- 英検
- 日本国内の学校・就活では強い。
- ただし海外の大学出願に使えることはほとんどない。
- TOEFL / IELTS
- 世界中の大学・大学院で「入学要件」として認められている。
- 英語圏留学や移住の際の公式基準にもなる。
試験の性質
- 英検:合否型(級ごとに合格・不合格が決まる)。
- TOEFL / IELTS:スコア型(0〜120点、1.0〜9.0など)。 → 合否ではなく「スコア次第で行ける大学や国が変わる」仕組み。
実力の可視化
- 英検:「準1級合格」など資格的に見えるが、実力差は合格ラインぎりぎりでも余裕合格でも同じ扱い。
- TOEFL / IELTS:点数で自分の位置が細かく分かるので、客観的に強み・弱みを把握できる。
- 英検は「国内での受験メリット」に特化した資格。
- TOEFL / IELTSは「世界での通用度」と「改善に役立つフィードバック」が強み。
つまり「どこで英語を使うのか?」で選ぶべき試験は変わります。
まとめ:未来を見据えた投資はどちらにすべきか
英検は日本国内での進学や就職において確かに強力なツールです。
しかし、本当に子どもの未来を広げたいのであれば「世界基準で通用する英語力」を目指すべきです。
TOEFLやIELTSは海外大学出願に必須なだけでなく、日本国内の大学や企業でも十分に評価されます。
つまり、英検よりも国際的に通用する試験に時間もお金も投資した方が、結果的に子どもの将来の選択肢を広げることにつながるのです。
もちろん、国内校受験予定でそこでの武器として使うのならば英検は価値があると思います。
資格そのものがゴールではありません。
大切なのは「どの舞台で英語を使いたいのか」という子どもの未来像です。
国内にとどまるのか、それとも世界に挑戦するのか。
その方向性を考えたうえで、どの試験を選ぶのか。難しいですが、考えていきたいポイントであると思います。
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